介護も見据えて1階を快適リフォーム
55年ものあいだ、家族で切り盛りしてきた蕎麦店を畳み、
80歳を過ぎた夫妻がゆったりと、そして安全に、暮らしていくため、
1階で生活を完結できるよう、店舗兼住居が生まれ変わりました。
腰を悪くしてから段差や階段が難所に
「店にはね、毎日来てくれる人もいたよ。夜になりゃ、酒を飲む人もいてね。朝は5時に起きて仕込みをして、ちょっと休憩してから店を開けて、夜は8時くらいまでやってましたよ」(夫)
1階は店舗と厨房、そして家族のためのダイニングと洗面室、浴室。日中は、店舗と厨房を忙しく行き来し、家族の食事の時間には厨房からダイニングへ段差を上り下りしなければならないという生活動線。しかも厨房には暖房設備がなく、冬はとても寒かったそうです。
また、寝室は2階にあり、毎朝毎晩、急な階段を上ったり下りたりする必要がありました。
「もうやり切った、って店を畳んだ途端、体にガタがきちゃって。もう86歳だしね。そしたら母ちゃんが転んで、腰を悪くして、余計に段差とか階段が苦になってしまってね」(夫)
「母のことも心配だったので、私のほうからリフォームをしようと提案したんです。実は私、結婚して家を建てるときに、土地探しから早稲田ハウスにお世話になっていて、完成後のサポートやメンテナンスの相談にものっていただいていたんです。もう20年近くのお付き合いになりますね。実家のリフォームをお願いするときも、早稲田ハウス以外は考えていませんでした」(娘)
「俺らはこの先、どうなるかわからないし、リフォームなんてしなくてもって言ったんだけどね。でも母ちゃんに言わせると1階は寒いし、段差はキツいしって。だから娘に任せました」(夫)
段差のない、ひとつながりの生活空間
リフォームの際のリクエストは大きく3つ。2階に上がらなくても眠れるよう、1階に寝室をつくりたい。キッチンとダイニングを段差なく移動できるようにしたい。寒くない浴室がほしい。
そこでまず床から壁、天井まですべてを一度取り去って、傷んでいる部分は補修し、断熱材を入れ直し、必要に応じて窓をペアガラスにして、1階全体の断熱性を向上。玄関からリビング、ダイニング、寝室、そしてまた玄関、と一周できる間取りとして、リビングには床暖房も導入しました。
もちろん洗面室と浴室も一新。窓が大きく、冬は室温がほぼ外気と同じくらいまで下がってしまっていた浴室は、窓の大きさを見直して、段差をなくし、安心してくつろげる空間に。
「洗面室にタオルや着替えなどを収納しておく場所がなくて、ずっと不便に思っていたんですが、手前の壁に可動棚の収納をつくるアイデアをいただき、なるほどと思いました。私たちでは想像もつかなかったことをご提案いただいたので、とても感動しました!」(娘)
トイレは向きを変更してスペースを広くし、収納や手すりも設置。寝室やダイニングからも行き来しや すくなり、1階の生活利便性がさらに高まりました。
「リフォーム工事のあいだ、俺と息子は仮住まいをしないで、住みながらずっと工事が進んでいくのを見てたんです。たまに現場監督や職人さんに注文つけたりしてさ。実は、テレビが映らなくなって、直してもらったりも……(笑)。おかげさまで、いまは快適に過ごせてますよ」(夫)
おっしゃるとおり、住みながらの工事だったため、できる限り工期を短くする必要があり、1階の店舗部分はそのまま残すことになりました。営業時にお客さんが出入りしていたエントランスは、シャッターこそ閉まっていますが、外観も蕎麦店の面影を残したままとなっています。
毎日1時間、健康維持のため玄関から散歩へ
「以前の家は寒かったけど、いまは床暖房もあるし、あったかいですね。いつもこのリビングでテレビを見ていて、夜になったらお風呂に入って、そのまま寝室に行けるのでとってもラク。もう階段を上ったり下りたりしなくていいんですから」(妻)
リフォーム前は、店の厨房で家族の食事も準備していたということで、その頃に比べるとキッチンは随分とコンパクトになってしまいましたが、使い勝手は申し分ないようです。
「厨房には、流し台が2つ、冷蔵庫は5つもあったんですよ。それが小さくなって1つずつになったんですが、いまは家族3人だけだから、これで充分かなと思ってます」(妻)
そして玄関。実は、以前は厨房の裏口から出入りをしていて、玄関らしい玄関はなかったのです。
「玄関があるっていいねぇ。当たり前のことですけど、出かけるときは玄関から出て、また玄関に帰ってくるっていう。いまはさ、お医者さんに『歩かないと歩けなくなるよ』って言われてるから、毎日1時間は散歩するようにしてて。冬のあいだは昼間に出かけるけど、いつもは 5 時から歩きに行っちゃうね。あとは、テレビで相撲を観たりしてゴロゴロしてる(笑)」(夫)
最後に改めて、家の中で、お気に入りの場所を伺うと、「住み慣れた古い家なのに中身が全部新しくなったんだから、全部気に入ってるよ」とのご回答でした。
仲間から贈られた柱時計が家族を見守る
「両親と一緒に暮らしている兄も『階段の上り下りの途中で休憩している母を見て、心配していたから、あのタイミングでリフォームしたのは正解だった』と言っていました。ご近所のかたがよく遊びにくるらしいので、母がおしゃべりを楽しめる場所ができてよかったです」(妻)
その “おしゃべりを楽しめる場所” である、玄関を入ってすぐのリビングには、風格のある柱時計が掛けられています。ガラス部分に描かれ、ほとんど消えかけている文字は「贈」でしょうか。
「あの時計は、店を始めるときに商店街の仲間がお祝いに贈ってくれたんだ。もう60年くらい前の手巻きの時計なんだけど、いまもちゃんと動いてるんですよ」(夫)
その柱時計はまさに、地域の人々に愛されながら、蕎麦店を続けてきた家族の歴史を表しているように感じられます。楽しいときも、少し疲れたときも、家族を優しく包み込んでくれる空間へと生まれ変わった家で、その歴史はこれからも続いていくことでしょう。
Staff Voice
コーディネートリーダー
相川葉子
中村様ご主人様奥様に支えられて工事が完成しました。
1階はお蕎麦屋さんの店舗がありました。いわゆる店舗付き住宅の改装です。
今回の改装の目的は急な階段で毎日上り下りする奥様になんとか安全に過ごしていただきたいということです。そのために奥様の部屋を新たに1階につくり、水廻りまでの動線を短くしました。
お部屋からすぐ玄関へ出ることもできるし、お部屋から廊下を通らずLDK とトイレに行けるので安心安全です。お打ち合わせはお嬢様の椎名様とご両親の事を思いながら楽しく決めていきました。
工事中ご主人様は時間の許す限り現場で職人さんの様子をご覧になっていました。音が出る作業が続いていてもいつもにこやかに現場の中で立っていました。
私たちがお打ち合わせに行くとその日の事をいろいろ教えてくださりまるで監督のようでした。
奥様もお茶菓子を皆に用意して休憩の時間をきちんとつくってくださいました。
私たちだけなく棟梁も御主人様奥様のファンになっておりましたので、気持ちよく作業ができ、とても楽しい現場になりました。ご主人様奥様は周りをあたたかく包み込んでくださる方です。
〈リフォーム前の厨房と店舗〉

